朝日新聞社クラウドファンディングサイト「A-port」がスタートしました。ここに立つまで、なんと長い道のりだったことか。
初めまして!朝日新聞社メディアラボの中西知子と申します。これまで主に、企画事業部門などで、乳がんの早期発見の大切さを伝える「ピンクリボンキャンペーン」や、女性活用を含め誰もが活躍できる社会を目指した「ダイバーシティープロジェクト」などを立ち上げ、プロデュースをしてきました。企画部門の私が、今回、クラウドファンディングを手掛けることになったきっけは、社内の新事業創出コンテスト「START UP!(スタートアップ)」でした。
クラウドファンディングとの出会い
私が、クラウドファンディングを知ったのは、2012年。友人でドキュメンタリー映画監督の佐々木芽生さんが、クラウドファンディングサイトで映画の制作費・宣伝費などを調達していたことがきっかけでした。
「お金を借りるのに、マンションを抵当に入れたの」。そこまでして映画を作ろうとしていたことに当時、とても衝撃を受けました。その彼女が、最後に頼ったのがクラウドファンディングでした。
目標金額は1000万円。当時、この金額は、日本では未踏の領域だったようです。クラウドファンディング未経験者の私は、目標金額については無頓着で、多くの人が参加するから大丈夫なんだろうなと思いこみ、最初はお付き合い程度の金額を支援しただけでした。ですが、終了間近になっても、目標金額に到達しておらず、監督から、さらなる支援を呼びかけるメッセージを受け取りました。
「これはマズイ」。30000円を追加支援し、他に自分が出来ることはないかと考えました。フェイスブックで友人に協力を呼びかけ、さらにプロジェクトを盛り上げるイベントも開催して、……気がつくと、濃い応援団の1人となり、佐々木監督との距離もぐっと近くなっていきました。
多くの支援者が彼女を支え、最後の追い込みで目標金額を達成し、最終的には1400万円を超える資金の調達に成功。彼女は夢を実現しました。
少しでも関われたことを誇りに思うようになり、彼女の映画のことを知っている人に出会うと、「ありがとうございます」と思わずお礼をいうようになってしまいました。まるで、自分も映画を作った仲間という意識が、自分の中に芽生えてしまったようです。
クラウドファンディングの魅力と課題
「クラウドファンディングって素晴らしい!」。
この仕組みが日本に定着したら、誰もがもっとチャレンジしやすく、支援しやすい社会になるのではないか……。当初は、クラウドファンディングを日本に普及させるためにイベントを開催し紙面連動させるなど、メディアとして何かできることがないかと思い、クラウドファンディングについて調べはじめました。
「日本では認知度が低い」「発信力がほしい」。そんな声がサイト運営会社側から聞こえてきました。様々な人に話を聞くうち、「新聞社がクラウドファンディングの運営者になれば、認知が高まり、市場拡大に少しは貢献できるのではないだろうか?」。そんな思いを抱き始め、時間が経つにつれて、どんどん考えが膨らんでいきました。そして情報の発信から一歩進めて、情報に共感する人から自ら直接支援の輪に加わる「場」を創ることは、新聞社の新規事業としてふさわしいのではないかという思いが強くなっていきました。
社内新規事業コンテストからスタートしたA-port
そんな時(2013年7月ごろ)、社内で「新規事業コンテスト」が開催されることを知りました。まさに、絶妙のタイミングでした。
そのコンテストに、クラウドファンディングサイトを立ち上げる提案を出すことを決意。以前から、「日本のためになる事業をいつか一緒にやろう」と約束していた同僚に相談をし、彼も「よし、やろう!」と即決してくれました。その後、クラウドファンディングの記事を熱心に書いていた記者が仲間に加わり、その後、最終審査までの間に仲間が、1人、2人と増えていきました。
ブラッシュアップ会などなど手順を踏むこと7か月。年齢・所属もバラバラな仲間と「新聞社らしいクラウドファンディングサイトとは」「社会的意義は?」「リスクは?」「新聞社として守るべき倫理上の注意点は」などなど議論を深めていきました。年末年始も最終プレゼンの準備をし、そして、忘れもしない審査結果が出る2014年2月7日。
「おめでとう!最優秀賞です」。この1本の電話が、ある意味、私の人生も変えました!
そして、2014年4月、メディアラボという社内ベンチャーの部署に異動し、事業化に向けてスタート地点に立つことが出来ました。
そんな背景があり、立ち上がった「A-port」です。私たちは、日本に「クラウドファンディングで支援する」という新しいお金の使い方が定着することを目指していきたいと思っています。そして、挑戦しやすく支援しやすい社会をつくり、その結果、世の中の課題を解決し、新しいビジネス、文化を創出していくというミッションを掲げ、取り組んでいきます。
A-portの「A」には、冒険(Adventure)する、行動(Action)する、という意味が込められています。夢を持った人が、帆を立てて出帆への準備をする港(port)になり、ひとりでも多くの方の夢の実現を後押ししていきたいと思います。
今日、A-portを始動します!

A-portスタッフ集合。左から4人目が中西知子