成功者の声
2021年09月08日 16時59分
クラウドファンディングを始めたいけど、何から手をつけたらいいのか分からない――。そんな人のために朝日新聞社のクラウドファンディング「A-port」(エーポート)では、成功者を招いてその秘訣を語っていただくイベントを開きました。講師は、「お金の教科書プロジェクト」で2回のクラウドファンディングを実施し、いずれも資金調達に成功した公認会計士の眞山徳人さん。今回のコラムでは相談会で眞山さんが話したことをもとに、クラウドファンディングの成功の秘訣を探っていきたいと思います。
眞山さんが取り組んでいるプロジェクトは、おこづかいから起業まで、お金との向き合い方を学べる子ども向けの「お金の教科書」を作り、児童養護施設などへの寄贈を行うというものです。
2018年4~6月に実施した1回目のクラウドファンディングでは、当初の目標の倍近い約95万円を集めました。眞山さんはこの資金を元手に1000部の「お金の教科書」を制作しましたが、たくさんの施設からの寄贈依頼が相次いで欠品状態になってしまったため、2000部を緊急増刷する2回目のクラウドファンディングをスタート。こちらも目標額の30万円を超える支援が集まっています。
眞山さんは自らのプロジェクトが成功した理由について、「始まりは終わり」「終わりは始まり」という言葉で説明しました。
「始まりは終わり」というのは、クラウドファンディングには事前の準備が大切だということです。この言葉を念頭に、眞山さんの1回目のクラウドファンディングを振り返ってみましょう。
1回目がA-portで公開されたのは4月15日でしたが、眞山さんはその前から、プロジェクトの周知を始めていました。
例えば4月10日には自身のフェイスブックで「プロジェクトのざっくり説明①」と題して、お金の教科書やクラウドファンディングについて説明し、「あと5日やるぞー!」などと記しています。4月12日には「最初の一週間で150,000円を目指します!」「クラウドファンディングのプロジェクトは、初速が順調であればあるほど成功しやすい」などと具体的な目標やノウハウ的な面にも言及しました。自分が何をしたいのか。みんなに何をしてほしいのか。そういったことを毎日、内容を変えて投稿し続けたそうです。こうした「ちょい出し」は、クラウドファンディングについて何か一言話したくなる『にわか評論家』をつくるためだった、と眞山さんは説明しました。
「(海に最初に飛び込む)『ファーストペンギン』は大事で、コメントを1人でもしてくれると、他の人もコメントしてくれるようになります。カウントダウンとちら見せをすることで、味方がだんだん集まってきます」
眞山さんがいうところの『評論家』になってくれれば、その人もプロジェクトについて頻繁に話すようになります。資金調達が始まった後も、状況を報告するだけでいろいろなコメントをくれるようになり、プロジェクトの盛り上げに一役買ってくれるでしょう。このようにクラウドファンディングが始まる前に自分の味方になってくれる人を増やしておくことが、実際に資金調達をするときには大きな力になります。
「やってしまいがちなのは、自分だけががんばって、みんなにモノを売ろうとしてしまうこと。こうしないのが最大の成功要因です。自分と知り合いを同じ側にして、知り合いの知り合い、知らない人に対して、一緒にモノを売ってもらうんです。自分が何もしていないのに、他の人がプロジェクトを宣伝してくれるというのが一番理想的です」
こうした条件を整えるために、眞山さんは「ちゃんとお願いしましょう」とお願いすることの大切さを強調しています。眞山さんの1回目のクラウドファンディングは、公開からわずか2日で目標を達成しましたが、それにはちゃんと「仕掛け」がありました。初日から勝負をかけるために、知り合いに呼びかけるときには単に「お金を払ってください」というだけではなく、「(公開直後の)4月15日、できれば午前0時過ぎに支援してください」とタイミングを含めてお願いしたそうです。
「お金を払ってください、手伝ってくださいということを、みんなに個別にお願いしましょう。いかに臆面なくお願いできるかが、成功の決め手です」
眞山さんは、クラウドファンディングは「終わりが始まり」であることも忘れないように念押ししました。資金調達が終わった瞬間は、お金だけ手元にあって、これからやることが山積している状態です。多くの起案者にとっては、実はここからが本当の意味でのプロジェクトのスタートであるはずだからです。
眞山さんの場合、1回目の資金調達が終了した後に、支援していただいた人にきちんと活動を報告し、本が足りなくなってきていることを伝えていたことが、2回目のクラウドファンディングにもつながりました。1回目のクラウドファンディング中に掲載されたハフポストの記事は、資金調達が終了した後も「お金の教科書」の取り組みを広げていく上で、名刺代わりとして利用しているそうです。これからクラウドファンディングを始めようと思っている方もぜひ、「始まりは終わり」「終わりは始まり」を意識して、プロジェクトの展開を考えていただければと思います。(伊勢剛)