HOWTO
2021年04月21日 22時16分
クラウドファンディングは、インターネットを介してチャレンジや夢の実現に必要な資金を集める仕組みです。資金援助を受けたい人が起案者となって専用サイトにプロジェクトを立ち上げ、共感・賛同してくれる支援者を募集します。
クラウドファンディングを成功させるカギは、公開前の事前準備にあるといっても過言ではありません。いったんプロジェクトを公開すると変更できない部分もあるため、あらかじめ全体の流れやどんな準備が必要なのかを押さえておきましょう。
この記事では、はじめてクラウドファンディングにチャレンジする人に向けて、事前準備から公開までにやるべきことを解説します。しっかり準備を整えてから、プロジェクト公開に臨みましょう。
クラウドファンディングとは、起案者のプロジェクトを資金援助という形で応援できる仕組みです。参加した支援者は、プロジェクト成立後にメリットや特典(リターン)を得られます。寄付型、購入型、ファンド型、融資型などの種類があり、リターンの内容が異なります。
寄付型では税制上の優遇措置は受けられますが、基本的にリターンがありません。購入型では資金援助の代わりに品物やサービス、権利などが得られます。一方、ファンド型や融資型は、プロジェクトで発生する配当金や利子をリターンとして受け取れる金融サービスです。
寄付型、購入型のプロジェクトの種類には、下記の2つがあります。
・All or Nothing型(達成時実行型):起案者は、目標金額を達成した場合にのみ資金を受け取れる。未達成の場合、支援はすべてキャンセルされ、プロジェクトは実行されない。
・All in型(実行確約型):目標金額に達していない場合でも資金を受け取れる。起案者はプロジェクトを必ず実行しなくてはならず、支援はすべて有効になる。
クラウドファンディングをはじめるなら、プロジェクト公開予定日の1ヵ月前には事前準備をはじめる必要があります。スケジュールを立てて着実に計画を実行していきましょう。
クラウドファンディングで「何を実現したいのか」を明確にします。夢があるなら具体的に書き出してみましょう。資金調達の方法はほかにもあるため、目的達成の手段としてクラウドファンディングが適しているかどうかも検討課題です。
クラウドファンディングはあくまでも手段です。起案者に強い目的意識がなければ、なかなか支援者は集まりません。単なるお金集めが目的だと思われないように十分注意しましょう。
クラウドファンディングで調達する資金の目標金額を決めます。目的の達成に必要な金額やサイト利用料、リターンにかかる費用などを考慮して、支援者にお願いする現実的な金額を洗い出しましょう。
ポイントは、最低限必要な金額を目標金額に設定する点にあります。資金のすべてをクラウドファンディングで調達するのではなく、自分では集められなかった不足分の支援をお願いするという謙虚な姿勢が大切です。
順調に目標を達成できるとは限らないため、「公開10日目までに30万円、20日目までに60万円」のように目標金額を段階的に設定しましょう。各段階で目標が達成できなかった場合に、イベント開催などのテコ入れ策を打ち出しやすくなります。
支援者を募集できる期間は、クラウドファンディングのサイトによって異なります。資金が必要となる日時が決まっている場合は、逆算して募集期間を設定しましょう。A-portではプロジェクト達成から入金までに3週間程度かかります。
一方、募集期間が長ければ支援者が多く集まるというわけではありません。募集期間中にできそうな支援呼びかけのイベントなど具体的なプロモーションのスケジュールを立て、必要な期間を考えましょう。支援者が集まりそうな機会があるときは、なるべく募集期間と重なるように調整してください。
プロジェクト公開後になかなか支援が集まらないと、サイトを見た人に「達成は難しそうだ」という印象を与えるおそれがあります。募集期間中も支援者獲得のためにできることはあるため、自分が集中して取り組める募集期間を設定しましょう。
リターンは、支援金額に応じて段階的に設定します。支援しやすい価格帯は人によって異なるため、高価格帯も含め必ず複数の選択肢を用意しましょう。
1,000円、5,000円、1万円のように価格帯を適度にばらつかせると選びやすくなります。ただし、選択肢を増やしすぎるとリターン選びが面倒になって、途中でやめてしまう人も出てきますので注意してください。A-portの場合、1万円前後のリターンが最もよく選ばれています。1万円前後に魅力的なリターンが設定できると、成功の確率はぐんと高まります。
リターンの準備にはお金や手間がかかるため、目標金額はリターン分も加味して決めましょう。商品開発を目的とするプロジェクトでは、開発した商品をリターンにする方法が一般的です。寄付型では基本的にリターンを用意する必要がありませんが、お礼のメッセージや活動内容がわかる写真などを提供すると喜ばれます。
プロジェクトを公開するサイトを決めます。これまでサイトに掲載されているプロジェクトや、手数料、入金のタイミング、募集期間、メディア掲載の実績などにも注目して、自分に合ったサイトを選びましょう。
クラウドファンディングは準備期間も含めると、3カ月から半年近くかかります。サイトの選択は、その期間を並走するパートナーを選ぶということですので、納得いくまで考えてください。
事前準備が整ったら、実際にプロジェクトを作成します。できるだけ多くの人の興味を引き、共感を得られる魅力的なページを作りましょう。
「準備編」で明確にした自分の夢やチャレンジしたい内容を分かりやすく伝えるページを作成します。特別なWebの知識がなくてもページ自体は作れますが、掲載する写真や動画はあらかじめ用意しておきましょう。動物保護が目的なら動物の写真、地域応援なら特産品の写真など、具体的なイメージにつながるコンテンツを用意します。
一方、プロジェクトを立ち上げた理由や提供できる価値、お金の使い道などを説明する文章も必要です。身近な人に文章を読んでもらうと、分かりにくい部分や不足している要素を把握しやすくなります。応援したいと思ってもらうための大切なページだけに、独りよがりな表現や誤解を招く部分がないかどうかを何度も見直しましょう。
起案者のプロフィールは、支援を決めるうえで重要な判断材料になります。プロジェクトの内容に説得力を持たせるためにも、プロフィールを充実させましょう。起案者に共感して支援を決める人は少なくありません。
プロフィールには、自分やチームの自己紹介、経歴、写真、大切にしている価値観、普段どんなことに取り組んでいるのかなどを盛り込みます。「この人なら信頼できる」と思ってもらえるようなプロフィールに仕上げましょう。
クラウドファンディングではプロジェクト公開直後のスタートダッシュが成功を左右するといわれています。公開直後に支援者を確実に集めるためには、プロジェクト公開前の情報拡散が不可欠です。
個人的な友人や知人、家族、興味を持ってくれそうな法人などに、「○日にクラウドファンディングでこんなプロジェクトをはじめるので見てほしい」と直接伝えましょう。人が集まる機会を捉えてプロジェクトの説明をしたり、店舗にリーフレットを置いてもらったりする方法も有効です。
SNSも積極的に利用して、自分とつながりがない人にも広くプロジェクトを知ってもらいましょう。情報拡散をしない場合、支援の範囲がごく限られてしまいます。
プロジェクトの公開後にやるべきことを解説します。支援をしてくれた人にも検討中の人にも、積極的な情報発信を続けましょう。
クラウドファンディングサイトには、活動報告や新着情報を登録できる機能があります。プロジェクトを公開したら、ちょっとしたことでも構いませんので、こまめに近況報告をしましょう。プロジェクトの進み具合を確認できるため、支援者やページ閲覧者の安心感が高まります。写真も併せて掲載すると説得力がアップします。以下で活動報告の具体例を紹介します。
・店舗経営が目的の場合なら、内装工事が終わった、看板が完成した、など
・児童養護施設支援が目的の場合なら、ランドセル○個分が購入できる、子どもたちの食事代が○日分集まった、など
・メディア掲載の報告、メンバー紹介、リターンの詳しい説明、プロジェクト紹介ページに盛り込めなかったエピソード、など
プロジェクト公開直後は支援が集まりやすい時期ですが、日数が経つにつれてページを閲覧する人は減っていきます。再び注目を集めるためには、起爆剤的な企画やイベントの開催が必要です。
ただし、クラウドファンディングに触れずにイベントを開催すると、支援をお願いした時点で興醒めしてしまう人も少なくありません。案内する際にプロジェクトの内容や目的をきちんと説明して、共感してくれる人に参加してもらいましょう。
公開前に支援を依頼した人に、再度丁寧なメッセージを送る方法も有効です。活動報告も兼ねて、自分の決意を伝えましょう。支援者自身にプロジェクトの発信者になってもらえれば、支援の輪が広がりやすくなります。
プロジェクトの終了直前は、スタート直後と同様に支援が集まりやすい時期です。終了まであと○日、目標達成まであと○円、達成率○%など、具体的な数値を入れて最後のお願いをしましょう。ある程度支援が集まっている状態であれば、「もう少しで達成できるなら応援してあげたい」と思う人が現れるケースも珍しくありません。
やるべきことがしっかりできていれば、ラストスパートで支援者を大きく増やせる可能性があります。最後まで諦めずにプロジェクトに集中して情報発信を続けましょう。
募集期間内に目標金額を達成した場合、継続して支援者を集められるシステムがあります。起案者にデメリットはないため、上手に活用してください。
募集期間の終了後にやるべきことを紹介します。取り組みを継続して応援してもらうためにも、終了後の活動にしっかり取り組みましょう。
支援者に対してできるだけ早くお礼をします。購入型ではリターンになる商品を楽しみにしている人が多く、寄付型では自分が何に貢献できたのかを知りたい人が少なくありません。報告がないと不安になる人もいるため、終了後はすみやかにコンタクトを取りましょう。
活動内容の報告は、プロジェクト終了後もSNSやブログ、自社サイトなどで継続します。商品が完成した、お店がオープンしたなど、支援金で何ができたのかについて発信しましょう。写真を掲載すればより効果的です。信用が得られれば、その支援者はクラウドファンディングが終わってからも強力なサポーターとして応援してくれるでしょう。
購入型の場合は、プロジェクト内で設定した期限内に必ずリターンを送らなければなりません。特に商品開発目的のチャレンジでは、実際にリターンを渡せるまでに時間がかかる場合があります。無用な疑いを招かないためにも、生産が始まった、最終テストが終了したなどの活動報告は定期的に発信しましょう。
リターンが品物の場合は、荷作りや発送に手間がかかります。リターンの発送時期を決めるときにはその手間も考え、スムーズに送れるように事前にできる準備を進めておきましょう。
寄付型では原則的にリターンは発生しませんが、何に支援金を使ったのかという報告は必要です。支援金の使い道がわかるメッセージや写真を送ると、支援者の達成感や満足感が高まります。
支援金の受取方法は、サイトによって異なります。募集終了日を基準にして「月末締め翌月20日払い」のようなスタイルを採用しているケースが一般的です。このルールで4月15日が終了日だった場合、入金されるのは5月20日です。利用規約等に記載されていますので、必ず確認するようにしましょう。
支払日には、支援金から利用手数料を差し引いた金額が指定の口座に振り込まれます。入金された支援金には税金がかかる場合がありますので、注意してください。
クラウドファンディングを成功させるためには、成功の法則を理解して受け身にならず自ら情報を発信するスタンスが大切です。以下で、知っておきたい3つのポイントについて詳しく解説します。
「3分の1の法則」とは、アメリカの大手クラウドファンディングサイト・Indiegogoが公表した成功法則のひとつです。成功したプロジェクトでは支援者の内訳が下記のようになるとしています。
・3分の1は、起案者の身近な人
・3分の1は、身近な人の知人
・3分の1は、不特定多数の人
もちろん実際にこうした比率になるかどうかはプロジェクトによって異なりますが、100万円を集めたければ、33万円は自分自身で集めるぐらいの気概が必要です。そこまでの熱量があって初めて赤の他人の協力者も現れてきます。サイトまかせ、他力本願ではプロジェクトの成功率が下がってしまいます。
プロジェクトの内容も大切ですが、起案者がどんな人なのかという点も重要なポイントです。プロジェクトそのものに魅力を感じて応援したいと思う支援者もいる一方で、「この人を応援したい」と思う人も少なくありません。
インターネットでつながる人の多くは、起案者を詳しく知りません。自分を知ってもらうためにも、プロフィールは丁寧に作りましょう。自分自身に魅力を感じてもらえれば、チャレンジが軌道に乗った後もファンとして応援してもらえる可能性が高まります。
ただし、不特定多数の見知らぬ人の応援を勝ち取るよりも、身近にいて自分を信頼してくれる人に支援者になってもらうほうが簡単です。ぜひ勇気を出して、自分の夢を身近な人に話してみてください。
情報発信もおろそかにはできません。準備期間から終了後まで積極的に情報発信を続けなければ成功は難しいためです。SNSのアカウントがない人は作りましょう。多くのクラウドファンディングサイトは特定のSNSアカウントでログインできるため、利便性もアップします。
一方、運営サイトのメディアでプロジェクトを紹介してくれる場合もあります。サイトが得意とする部分はサイトにまかせて、起案者はより細やかな情報発信に徹しましょう。
クラウドファンディングで成功するためには、プロジェクト公開前の準備に万全を期す必要があります。やるべきことをリスト化してスケジュールを立て、ひとつずつ着実に計画を進めましょう。
特にスタートダッシュに参加してくれる支援者の確保は重要です。職場の同僚や学生時代の友人、同じ目的で活動している団体など、人脈と経験をフルに活用して支援の輪を広げましょう。
はじめてプロジェクトを立ち上げる人は、サポートが充実しているクラウドファンディングサイトを選ぶと安心です。サイトが持つメディアやプレスリリースも上手に活用してみてください。
実現したい夢がある人は、クラウドファンディングで新たな一歩を踏み出してみませんか。