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プロジェクト

2017-03-30 12:05:56

孤独にさせない、社会から遠ざけない…がん経験者が創る、患者コミュニティの理想郷

孤独にさせない、社会から遠ざけない…がん経験者が創る、患者コミュニティの理想郷

筆者都合での書き出しで申し訳ないが、私の父は65歳で亡くなった。

がんだった。当時、私は26歳だった。がん発覚から約6年、彼の闘病に付き添った。「父は絶対に生き延びる」という空虚なポジティブ思考で生きていく日々は、正直、苦しかった。

がんに関する情報がなかったからだ。共に病魔と戦う家族として、がんに関する“前向きな情報”は、どこを探しても見つからなかった。

NPO法人5yearsの代表、大久保淳一氏も42歳の時に精巣がんが見つかり、闘病生活に入った。それから10年。がんは完治し、今、日本中のがん患者を支える活動をスタートさせている。外資系金融企業という安定を捨ててまでも。

がん患者への理解がある外資系。日本はどうだ?

ーー 42歳という働き盛りの時に、精巣がんに?どういう経緯での発覚だったのでしょうか?

大久保:実は足の骨折なのです。手術が終わり退院するとなっても熱が下がらず、おかしいなと。そこで泌尿器科での検査を受け、精巣がんが発覚しました。

すぐに当時の上司に伝えました。外資系のゴールドマンサックスに勤めていたので真っ先にクビになるかなと思ったんですが、「戻ってくるのを待っている、ずっとだ」と。あと、自分たちにできることはなんでも言ってくれという言葉をもらって……正直、意外な答えでしたね。

かつ、彼らは言葉だけでなく行動で思いを示してくれました。例えば、自宅で療養しているときに、会社に呼んでくれて社長と30分の面談をセットしてくれたり、ゴールドマンの中にいるがん経験者との面談の時間をセッティングしてくれたり。

「大事にしているよ」というメッセージを行動で表してくれるので、クビにはしないとは言わないけれど、心配するなみたいなことをずっと伝えられていたような気がします。



-- なぜそこまで?日本企業でそこまでサポートをしたという事例は聞きませんが。

大久保:ゴールドマンサックスのフィランソロフィーが大きいですね。私だけでなく、あの会社にはがんを患った人間が何人もいましたし、15年以上も前からLGBTを支援しているくらいでしたから。

多国籍な企業だからこそ、人種も年齢も性別もLGBTも関係ない。当然、病気だからどうのということもありませんでした。

ただ、日本の社会では、これほどのサポートはあまり聞きません。ゴールドマンにいるときによく同僚の外国人と話したんですけれど、「この国は、がんと鬱をすごくタブー視している、おかしい」と。

最近、色々なところで「がんと就労」の話を聞くのですが、がん患者が社会復帰する場合、壁にぶつかっているというケースが印象的です。脳梗塞や心筋構想、うつ経験者も同様に。だからこそ、元がん患者であり、社会に復帰した私が、この風習を変えたいと思ったわけです。

がんは誰にも相談できない。がんは孤独。だからこそ

―― 闘病生活で、もっとも苦しかったことは、やはり抗がん剤による副作用でしょうか?

大久保:抗がん剤の副作用で併発した間質性肺炎ですね。

風邪をこじらせてなる肺炎は一部が炎症を起こすのですが、この病気の場合は肺全体が炎症を起こすようなものです。酸素は取り込めないし、二酸化炭素も出すことができない。呼吸がまともにとれなくて亡くなってしまう人も存在します。

つまり、抗がん剤治療により免疫が狂い、発症する病気なので、抗がん剤治療が終わっても治るわけではない、よい治療方法がない病気なんです。私の場合、当時がんと合わせると生存率が2割以下とも言われていたんですが、予後が悪い恐い病気ですね。

―― がんよりも生存率が低いのでは・・・

呼吸器疾患って、私こんなに辛いかなと思ったんですけれど、まともに酸素がとれないって、ずっと低酸素の状態が24時間毎日続くんです。本当にもう、苦しくて、苦しくて・・・拷問のような病気です。



ーー ちなみにこの写真は?

この壁にあるのは、自分自身を鼓舞するために貼っていた言葉の数々です。私、かなり忍耐強いほうだとは思っていたんですけど、がんになり、かつ間質性肺炎を併発して、「もう駄目」となったんですね。ただ、「いや大大丈夫だ!」と持ち直したり、1日のうちに、この波を幾度か経験して。

ちなみに、抗がん剤の副作用でうつもあるんですけれど、当然こんなになっていて。そのときに唯一できたのは、ああやって書くことだったんです。常に自分と対話しているような時間でしたから、もう1人の自分が言ったことを紙に書いて、見えると違いますよね。

「病気をして良かった」、と先ほど言いました。ただ、あの時のような孤独で、かつ自分ではどうしようもない苦しみは二度と経験したくないです。

生存率は今や60%。もはや、がんは絶望ではない

―― がんを経験したからこそ、元がん患者だからこそ、がんを患う人を助けたい。そんな思いで今回、クラウドファンディングを実施したのですか?

大久保:そうですね。今は治療が進み、5年生存率が平均で6割 (がん情報サービス調べ)と言われています。しかし未だに「がん=絶望」という印象が拭えない。

それはなぜか?ネットで検索すると現在、治療中の人の情報か亡くなった人の情報しか出てこないからです。それは、がんを公表すると、住宅ローンを組めなくなるとか、転職のときに不利になると思っている人が多いからとか、完治して生きている人の情報が全くないのです。

このままではネットの世界では99パーセントの情報が絶望感を与えるネガティブなもので埋め尽くされてしまう。そこを変えたいというのは、先ほどの話なんですね。

2015年100㎞のゴール。病気前の自己記録を更新し、9年越しの悲願を達成した



私自身、闘病中にがんから回復して元気になった人の情報を一生懸命探したんです。アームストロングもそうですけれど、メジャーリーグに復帰した野球選手もいれば、オリンピックに再出場した人もいる。

ただ、プロスポーツ選手みたいな“スペシャルな人間”だからこそ、生き延びられたと思ってしまうことも事実です。

だからこそ、私みたいな人間のストーリーが幾つもあって、その情報と出会ったがん患者や家族が共感してくれたら、きっと大きな力になると思うんですよね。

ーー 今回のクラウドファンディングは、あくまでその一歩ですよね。目先の悩まれている方はもちろん、がん患者が生きやすい社会をつくることこそが、大久保さんの目指すべきところなのかと。

大久保:今回のプロジェクトで目指すのは、全国のがん患者と経験者ひとりひとりをつなぎ、相談相手を指定して、利用料・無料のテレビ電話で個別相談ができる仕組み作りです。

がん患者は毎年、新たに100万人に見つかります。また、今や2人に1人ががんになるこの時代。がんに関する貴重な体験者情報が入手できる「プラットフォーム」をつくり、全ての悩めるがん患者にとって価値のある仕組みをつくりあげられればと。

そして今、5yearsの社会活動を“ソーシャルビジネス”にする試み、「ミリオンズライフ」も始めました。そうすることで活動が継続し、発展できると考えているからです。

僕の活動の第一歩、一人でも多くの人に応援いただけると幸いですね。

大久保さんが挑戦するプロジェクトはこちら


大久保淳一
1964年生まれ。ゴールドマン・サックス証券会社勤務時の07年、精巣腫瘍(睾丸がん)~全身転移の告知を受け、抗がん剤治療・後腹膜リンパ節廓清手術など厳しい闘病生活を送る。13年には闘病中からの悲願、サロマ湖100kmウルトラマラソンに復帰し、奇跡の完走を果たした。現在は、自ら設立したNPO法人で、がん患者支援活動「5years」に従事。