地元・出雲市の応援が力に 初心を胸に再び世界ヘ挑戦
高校からはじめて3年で日本代表に
コンマ差で勝負が決まる水上競技のカヌースプリント。200m、500m、1000mといった距離を筋力と持久力の限り漕(こ)ぎ進め、最速を競います。島根県カヌー協会に所属する原綾海(あやめ)選手は武庫川女子大学在籍時には世界選手権14位、日本選手権2位、世界大学選手権8位など、日本代表として欧州のカヌー先進国の選手たちと戦ってきました。目標としていた2021年の世界大会への出場はかないませんでしたが、現在は大学を卒業して地元の島根県出雲市へ戻り、2年後の世界大会に向けて再び練習をはじめています。
日本代表として勝負してきた原選手ですが、カヌーを始めたのは出雲農林高校へ入学してからと遅いスタートでした。しかし練習を重ねることで経験の差を乗り越え、3年の時にはインターハイ、日本ジュニア選手権、国体の500mで優勝。日本代表として世界ジュニア準決勝進出、アジアジュニア2位と、3年間で世代トップレベルの選手になりました。
「中学時代は陸上部に在籍と全く水に縁のない生活で、最初はカヌーから落ちないようになるまで1カ月かかりました。それでも3年間頑張ることで、国際大会やワールドカップに出場したいと具体的な目標を持てるまで成長できました。この3年間で競技人生はもちろん、物事の考え方も変わりました」
競技を始めた頃はカヌーから落ちないようになるまで1カ月かかった
「練習の質、量で経験の差埋めよう」監督の言葉を信じて
高校時代は午前6時半には学校の練習場である神戸川(かんどがわ)へ出てカヌーに乗り、昼休みはフォームチェック。授業終了後は午後9時まで水上や陸上でトレーニングという生活を繰り返してきました。高校2年の3月に行なわれる海外選手派遣選考会に間に合わせるため、その年の冬はカヌー強豪校の山形県の谷地高校まで行って練習に参加し、風が強く川で漕ぐことが難しくなる1月や2月も、静水を求めて山を越え、ダムで水上練習を行ないました。そして3月の海外派遣選手選考会で500m5位、200m4位、ペア500m3位となり日本代表に選出、世界ジュニアへの出場を決めました。
「カヌー部の大畑篤郎監督から、練習の質も量もライバルに勝っていくことで経験の差を埋めようという話をよく聞いていました。勝つためにはウエイトトレーニングを徹底的に行なって筋力を高め、持久系の運動もやりこんで、体の強さで勝負するしかありませんでした。やるべきことをやると必然的に時間は長くなります。勉強と休息以外の時間はすべてカヌーのために費やし、貪欲(どんよく)に続けたことがインターハイや日本ジュニア、国体の勝利につながったと思います」
「地元に戻ってよかった」アルバイトをしながら練習に励む
大学入学後も日本選手権2位や世界選手権14位など、国内外で結果を残し続けてきました。しかし目標としていた2021年の世界大会への出場はかなわず、日本代表も2020年を最後に復帰できていません。
家から近い稲佐の浜は原選手のランニングコース
競技を続けるか悩む時期もありましたが、最終的に2年後の世界大会を目標にもう一度競技に取り組むことを決めました。昨年末に出雲市の実家へ戻り、神戸川を拠点に練習しています。カヌーやエルゴメーターといった練習に必要な器具は出雲農林高校に借り、遠征費や強化費などカヌーを続けるために必要な費用はアルバイトをして捻出しています。大変な面もありますが、地元での生活は心が落ち着き、初心に帰って練習に励めると原選手は感じています。
「神戸川は波が立たなくて漕ぎやすいです。全国的に見てもカヌースプリントに最適な川のひとつと言っていいのではないでしょうか。高校時代のことを思い出しながら練習できるので、地元に戻って良かったと思います。練習をしていない時間はアルバイトで近所の農家の方の仕事を手伝います。堆肥(たいひ)運び、シイタケの株の搬入、ネコ車(一輪車)で土を運搬……。筋力があるので力仕事は得意なはずですが、使う筋肉が異なるので最初はすごい筋肉痛になりました」
そのほかにも高校生の時は気づかなかったことがあります。家から稲佐の浜が近いこと。神話にさかのぼることができる稲佐の浜は原選手のランニングコースです。
「家から走って15分。実家に戻って練習するようになって初めて近いことに気づきました。ここで海や波をじっと見ていると心が落ち着いてきます」
スポーツが仕事になる環境づくりをしたい
地元の方の紹介をきっかけに、明治安田生命の「地元アスリート応援プログラム」に参加しました。原選手自身、学生時代と異なり一人で練習する時間が長いので、地元の方から応援してもらうことが大変力になっているとのことです。支援金については、カヌーを借りて練習しているので自艇の購入費や、大会や代表の練習へ向かうための遠征費に使いたいと考えています。
「選手として結果を出し、カヌーを多くの人に認めてもらいたい」
近い目標は2年後の世界大会出場。さらに選手としてだけでなく、ゆくゆくはカヌー教室などで経験を伝え、2030年に予定されている島根国体で地元の選手が活躍できる環境づくりをしたいと考えています。動機を支えるのはスポーツが仕事になる環境をつくりたいという思いです。
「マイナー競技ほど大学卒業とともに競技を引退、一線から退くという人が多いのではないでしょうか。私は選手が自立してカヌーが仕事となりうる環境をつくっていきたいです。そのためにも選手として結果を出してカヌーを多くの人に認めてもらうことが大切です」
(取材・制作:4years.編集部)
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地元・出雲市の応援が力に 初心を胸に再び世界ヘ挑戦 高校からはじめて3年で日本代表に コンマ差で勝負が決まる水上競技のカヌースプリント。200m、500m、1000mといった距離を筋力と持久力の限り漕(こ)ぎ進め、最速を競います。島根県カヌー協会に所属する原綾海(あやめ)選手は武庫川女子大学在籍時には世界選手権14位、日本選手権2位、世界大学選手権8位など、日本代表として欧州のカヌー先進国の選手たちと戦ってきました。目標としていた2021年の世界大会への出場はかないませんでしたが、現在は大学を卒業して地元の島根県出雲市へ戻り、2年後の世界大会に向けて再び練習をはじめています。 日本代表として勝負してきた原選手ですが、カヌーを始めたのは出雲農林高校へ入学してからと遅いスタートでした。しかし練習を重ねることで経験の差を乗り越え、3年の時にはインターハイ、日本ジュニア選手権、国体の500mで優勝。日本代表として世界ジュニア準決勝進出、アジアジュニア2位と、3年間で世代トップレベルの選手になりました。 「中学時代は陸上部に在籍と全く水に縁のない生活で、最初はカヌーから落ちないようになるまで1カ月かかりました。それでも3年間頑張ることで、国際大会やワールドカップに出場したいと具体的な目標を持てるまで成長できました。この3年間で競技人生はもちろん、物事の考え方も変わりました」 競技を始めた頃はカヌーから落ちないようになるまで1カ月かかった 「練習の質、量で経験の差埋めよう」監督の言葉を信じて 高校時代は午前6時半には学校の練習場である神戸川(かんどがわ)へ出てカヌーに乗り、昼休みはフォームチェック。授業終了後は午後9時まで水上や陸上でトレーニングという生活を繰り返してきました。高校2年の3月に行なわれる海外選手派遣選考会に間に合わせるため、その年の冬はカヌー強豪校の山形県の谷地高校まで行って練習に参加し、風が強く川で漕ぐことが難しくなる1月や2月も、静水を求めて山を越え、ダムで水上練習を行ないました。そして3月の海外派遣選手選考会で500m5位、200m4位、ペア500m3位となり日本代表に選出、世界ジュニアへの出場を決めました。 「カヌー部の大畑篤郎監督から、練習の質も量もライバルに勝っていくことで経験の差を埋めようという話をよく聞いていました。勝つためにはウエイトトレーニングを徹底的に行なって筋力を高め、持久系の運動もやりこんで、体の強さで勝負するしかありませんでした。やるべきことをやると必然的に時間は長くなります。勉強と休息以外の時間はすべてカヌーのために費やし、貪欲(どんよく)に続けたことがインターハイや日本ジュニア、国体の勝利につながったと思います」 「地元に戻ってよかった」アルバイトをしながら練習に励む 大学入学後も日本選手権2位や世界選手権14位など、国内外で結果を残し続けてきました。しかし目標としていた2021年の世界大会への出場はかなわず、日本代表も2020年を最後に復帰できていません。 家から近い稲佐の浜は原選手のランニングコース 競技を続けるか悩む時期もありましたが、最終的に2年後の世界大会を目標にもう一度競技に取り組むことを決めました。昨年末に出雲市の実家へ戻り、神戸川を拠点に練習しています。カヌーやエルゴメーターといった練習に必要な器具は出雲農林高校に借り、遠征費や強化費などカヌーを続けるために必要な費用はアルバイトをして捻出しています。大変な面もありますが、地元での生活は心が落ち着き、初心に帰って練習に励めると原選手は感じています。 「神戸川は波が立たなくて漕ぎやすいです。全国的に見てもカヌースプリントに最適な川のひとつと言っていいのではないでしょうか。高校時代のことを思い出しながら練習できるので、地元に戻って良かったと思います。練習をしていない時間はアルバイトで近所の農家の方の仕事を手伝います。堆肥(たいひ)運び、シイタケの株の搬入、ネコ車(一輪車)で土を運搬……。筋力があるので力仕事は得意なはずですが、使う筋肉が異なるので最初はすごい筋肉痛になりました」 そのほかにも高校生の時は気づかなかったことがあります。家から稲佐の浜が近いこと。神話にさかのぼることができる稲佐の浜は原選手のランニングコースです。 「家から走って15分。実家に戻って練習するようになって初めて近いことに気づきました。ここで海や波をじっと見ていると心が落ち着いてきます」 スポーツが仕事になる環境づくりをしたい 地元の方の紹介をきっかけに、明治安田生命の「地元アスリート応援プログラム」に参加しました。原選手自身、学生時代と異なり一人で練習する時間が長いので、地元の方から応援してもらうことが大変力になっているとのことです。支援金については、カヌーを借りて練習しているので自艇の購入費や、大会や代表の練習へ向かうための遠征費に使いたいと考えています。 「選手として結果を出し、カヌーを多くの人に認めてもらいたい」 近い目標は2年後の世界大会出場。さらに選手としてだけでなく、ゆくゆくはカヌー教室などで経験を伝え、2030年に予定されている島根国体で地元の選手が活躍できる環境づくりをしたいと考えています。動機を支えるのはスポーツが仕事になる環境をつくりたいという思いです。 「マイナー競技ほど大学卒業とともに競技を引退、一線から退くという人が多いのではないでしょうか。私は選手が自立してカヌーが仕事となりうる環境をつくっていきたいです。そのためにも選手として結果を出してカヌーを多くの人に認めてもらうことが大切です」 (取材・制作:4years.編集部)
地元・出雲市の応援が力に 初心を胸に再び世界ヘ挑戦
高校からはじめて3年で日本代表に
コンマ差で勝負が決まる水上競技のカヌースプリント。200m、500m、1000mといった距離を筋力と持久力の限り漕(こ)ぎ進め、最速を競います。島根県カヌー協会に所属する原綾海(あやめ)選手は武庫川女子大学在籍時には世界選手権14位、日本選手権2位、世界大学選手権8位など、日本代表として欧州のカヌー先進国の選手たちと戦ってきました。目標としていた2021年の世界大会への出場はかないませんでしたが、現在は大学を卒業して地元の島根県出雲市へ戻り、2年後の世界大会に向けて再び練習をはじめています。
日本代表として勝負してきた原選手ですが、カヌーを始めたのは出雲農林高校へ入学してからと遅いスタートでした。しかし練習を重ねることで経験の差を乗り越え、3年の時にはインターハイ、日本ジュニア選手権、国体の500mで優勝。日本代表として世界ジュニア準決勝進出、アジアジュニア2位と、3年間で世代トップレベルの選手になりました。
「中学時代は陸上部に在籍と全く水に縁のない生活で、最初はカヌーから落ちないようになるまで1カ月かかりました。それでも3年間頑張ることで、国際大会やワールドカップに出場したいと具体的な目標を持てるまで成長できました。この3年間で競技人生はもちろん、物事の考え方も変わりました」
競技を始めた頃はカヌーから落ちないようになるまで1カ月かかった
「練習の質、量で経験の差埋めよう」監督の言葉を信じて
高校時代は午前6時半には学校の練習場である神戸川(かんどがわ)へ出てカヌーに乗り、昼休みはフォームチェック。授業終了後は午後9時まで水上や陸上でトレーニングという生活を繰り返してきました。高校2年の3月に行なわれる海外選手派遣選考会に間に合わせるため、その年の冬はカヌー強豪校の山形県の谷地高校まで行って練習に参加し、風が強く川で漕ぐことが難しくなる1月や2月も、静水を求めて山を越え、ダムで水上練習を行ないました。そして3月の海外派遣選手選考会で500m5位、200m4位、ペア500m3位となり日本代表に選出、世界ジュニアへの出場を決めました。
「カヌー部の大畑篤郎監督から、練習の質も量もライバルに勝っていくことで経験の差を埋めようという話をよく聞いていました。勝つためにはウエイトトレーニングを徹底的に行なって筋力を高め、持久系の運動もやりこんで、体の強さで勝負するしかありませんでした。やるべきことをやると必然的に時間は長くなります。勉強と休息以外の時間はすべてカヌーのために費やし、貪欲(どんよく)に続けたことがインターハイや日本ジュニア、国体の勝利につながったと思います」
「地元に戻ってよかった」アルバイトをしながら練習に励む
大学入学後も日本選手権2位や世界選手権14位など、国内外で結果を残し続けてきました。しかし目標としていた2021年の世界大会への出場はかなわず、日本代表も2020年を最後に復帰できていません。
家から近い稲佐の浜は原選手のランニングコース
競技を続けるか悩む時期もありましたが、最終的に2年後の世界大会を目標にもう一度競技に取り組むことを決めました。昨年末に出雲市の実家へ戻り、神戸川を拠点に練習しています。カヌーやエルゴメーターといった練習に必要な器具は出雲農林高校に借り、遠征費や強化費などカヌーを続けるために必要な費用はアルバイトをして捻出しています。大変な面もありますが、地元での生活は心が落ち着き、初心に帰って練習に励めると原選手は感じています。
「神戸川は波が立たなくて漕ぎやすいです。全国的に見てもカヌースプリントに最適な川のひとつと言っていいのではないでしょうか。高校時代のことを思い出しながら練習できるので、地元に戻って良かったと思います。練習をしていない時間はアルバイトで近所の農家の方の仕事を手伝います。堆肥(たいひ)運び、シイタケの株の搬入、ネコ車(一輪車)で土を運搬……。筋力があるので力仕事は得意なはずですが、使う筋肉が異なるので最初はすごい筋肉痛になりました」
そのほかにも高校生の時は気づかなかったことがあります。家から稲佐の浜が近いこと。神話にさかのぼることができる稲佐の浜は原選手のランニングコースです。
「家から走って15分。実家に戻って練習するようになって初めて近いことに気づきました。ここで海や波をじっと見ていると心が落ち着いてきます」
スポーツが仕事になる環境づくりをしたい
地元の方の紹介をきっかけに、明治安田生命の「地元アスリート応援プログラム」に参加しました。原選手自身、学生時代と異なり一人で練習する時間が長いので、地元の方から応援してもらうことが大変力になっているとのことです。支援金については、カヌーを借りて練習しているので自艇の購入費や、大会や代表の練習へ向かうための遠征費に使いたいと考えています。
「選手として結果を出し、カヌーを多くの人に認めてもらいたい」
近い目標は2年後の世界大会出場。さらに選手としてだけでなく、ゆくゆくはカヌー教室などで経験を伝え、2030年に予定されている島根国体で地元の選手が活躍できる環境づくりをしたいと考えています。動機を支えるのはスポーツが仕事になる環境をつくりたいという思いです。
「マイナー競技ほど大学卒業とともに競技を引退、一線から退くという人が多いのではないでしょうか。私は選手が自立してカヌーが仕事となりうる環境をつくっていきたいです。そのためにも選手として結果を出してカヌーを多くの人に認めてもらうことが大切です」
(取材・制作:4years.編集部)
支援期間終了
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支援者
2人
残り期間
0日
集まっている金額
6,000円
目標金額:300,000円
達成率2%
2023年02月28日23:59に終了しました。
支援期間終了
起案者
原綾海(明治安田生命・地元アスリート応援プログラム2022)
当制度を通じて、出身地や活動拠点地域など、サポートを受ける「地元」に対して貢献したいというアスリートの活動を支援します。
1,000円
お礼のメール
リターン
感謝の気持ちを込めて、お礼のメールをお送りします。
支援者の数 2人
支援期間終了
5,000円
お礼のお手紙+YELLS(支援アスリートの当該ブロック)
リターン
感謝の気持ちを込めて、お礼のお手紙、YELLS(支援アスリートの当該ブロック)をお送りします。
※「YELLS」は、地元アスリート応援プログラムに参加するアスリートに関する情報を、全国6ブロックごとにまとめた小冊子です。
支援者の数 0人
お届け予定:2023年4月
支援期間終了